令和8年(2026年)衆議院議員選挙(2月8日投開票)の東京都第25区選挙公報を読む
はじめに
ここしばらく、選挙があると選挙公報を読むという記事を書いているような気がしている。選挙公報を読むことはいろいろな気付きを得るきっかけとなっているので続けているのだが、選挙や選挙公報自体に面白さを感じるほどの興味は、現状では持っていない。それだけでなく、今回の衆院選については、「自民党と中道改革連合のどちらが勝とうと、選挙後にどちらの党派も影響力をいずれ失うので、結果自体に大きな意味はない」という見立てがある。私もそう考える一人だが、なぜそう考えるのかについて述べる余裕がないので、これ以上は触れない。投票前(開票前)の時点の備忘録として評価してほしい。
比例区の選挙について
東京都選挙管理委員会 衆議院議員選挙 | 比例代表選出議員選挙
選挙公報を見る前から、比例区では「減税日本・ゆうこく連合」に投票すると決めていた。信頼する藤原直哉氏がゆうこく連合の原口一博氏を評価するポストしている様子を見て、そのようにした。比例区の選挙公報は一瞥しかしていないので、特に論じたいことはない。政党や党派についてはいずれ機会を見て調べてみたいと思っている。
ちなみに「減税日本・ゆうこく連合」は選挙公報を総務省に提出していない(東京都選挙管理委員会の上記ページに「※総務省への原稿提出なし」と注記されている)。国政政党でこのような不手際はめったにあることではないと思う。結党から選挙まで時間がなかったからなのだろうか。
小選挙区の選挙について
東京都選挙管理委員会 衆議院議員選挙 | 小選挙区 東京都第25区
参政党(木村なみ候補)の選挙公報が一番よくできていると思った。
木村候補の公報では、まず大きく「ひとりひとりが日本」というコピーが掲げられており、これが参政党全体のコンセプトのようだ。「今、我が国は危機的な状況に直面しています。」で始まって、「『ひとりひとりが日本』未来を変えるのはあなたの覚悟と想いです。日本はまだ間に合う。」と締めている。選挙演説をまとめたもの・あるいは檄文のようなものと受け取った。さらにその下に「3つの柱と9の政策」が続いており、この部分が公約ということになる。
- 1の柱: 日本人を豊かにする ~経済・産業・移民~
- 2の柱: 日本人を守り抜く ~食と健康・一次産業・エネルギー~
- 3の柱: 日本人を育む ~教育・人づくり・国家観~
これを読んで評価できると思った点は
- 主張されていることの一貫性とまとまりの良さ
- 党の公約としても候補者個人の公約としても読める内容
- 参政党あるいは候補者自身がやりたいことがイメージしやすい
の3点になる。例として「1の柱」の部分を見てみよう。ここには3つの政策が書かれている。
- "集めて配る"より、まず減税
減税と社会保険料の削減により、国民負担率を35%に抑え、積極財政による経済成長で国民の豊かさが持続的に高まる経済構造を実現します。 - 日本はまだ間に合う "NO!移民国家"
労働力不足の解決を、安易な移民依存に委ねません。適正な人口計画を立て、外国人労働者の受入れと外国人の土地所有を制限します。 - 現場の人が支える日本
製造業、建設業、運送業、医療介護福祉や警察・消防・自衛官等、現場で汗をかく方々の待遇を改善し、安心して働ける社会をつくります。
全体のコンセプトの中で3つの柱は不自然でなく、柱の下に配置されている政策(柱ごとに3つの政策が掲げられている)も論理的に妥当なものだ。さらに各政策において主張されている事柄自体も現実的に着手可能であると思われるものが並んでいる。
そこに見られる公約の論理的整合性と政策の実現可能性は、日本の選挙公報一般の水準と比較すると高く評価できる。(私の判断について疑問がある方は、ご自分で選挙公報を読んでほしい。)これを書いた人たちは大したものだと思った。
そのような訳で、特定の支持政党がないが棄権もしたくない人間として、投票先をここに決める事にした次第だ。「ひとりひとりが日本」というスローガンにはついていけないものを感じているが。
注意しなければいけない点は、参政党の全候補者が同一の公約を掲げていることだ。他県の参政党公認候補の公報をいくつか見た限りでは、本人の顔写真と名前とプロフィール以外は同じ内容に統一されている。(県によって選挙公報のフォーマットが違うので完全に同じではないが、内容は統一されている。)つまり、個々の候補者が実際の所どのような人なのかが見えにくい構造になっている。
ただ、木村候補については、本人のプロフィールが好感を持てるものだったので、良しと判断した。以下に引用する:
東京都青梅市出身/看護師/参政党第25支部副支部長/娘、息子、引退犬2匹と穏やかに生活中/透き通る川と白いお米が癒し/いざとなったら東京ドームでも響く声量/「今回の人生は諦めた」そんな私が「現代を生きる誰かのために、日本人の未来のために」もう一度!
この人の人となりが伝わってくる内容だと私は思う。
最後にもう一点懸念している事について触れる。「ひとりひとりが日本」と言った時の「日本」はひとつではないだろうという点だ。私は参政党についてごくわずかな事しか知らないので違っているかもしれないけれども、この人たちはこの先も団結し続けられるのだろうかという疑いを抱いている。
近況報告・参議院議員選挙(2025年7月20日投開票)を終えて
今回も投票前に選挙公報を見た。しかし投票先はすでに決まっていたので、各党や各候補が提示していることをあれこれ評価する必要はないと考えていた。しかし話のタネになりそうなことに気付いてしまったので、開票後になるが結局選挙公報を読むことにはなってしまいそうだ。最終的にどうするかは調べてから決めたい。
参院選の投票先は選挙区・比例区ともにNHK党にした。理由は立花孝志氏のような「使いどころのある人」が引退してしまうのはもったいないと思ったからだ。開票結果は立花氏にもNHK党にとっても残念なことになった。このような結末に至ったことについてはそれなりの原因があったはずなので、心折れることなく逆境を乗り越えてほしい。評価は分かれるものの、立花氏の実行力や人気を考えれば新しい局面へ状況を打開してゆくことは十分できると期待している。
投開票日の翌日・7月21日の夜に自らが公開したYouTube動画選挙負けました。今後の活動についての中で立花氏は次のようなことをホワイトボードに書いていた。
そしてこのような主旨のことを語った:今回の選挙は議席が取れず国政政党への復帰もならなかった。成果を出せず借金もすごい金額になっているが、NHK党には優秀な仲間とこれまでの実績というお金でない財産がある。これから兵庫県に拠点を移して奥谷県議の地元から2年後の県議選に挑戦する。躍動の会と話をしつつ党の仲間もどんどん送り出して斎藤県政を支援したい。斎藤知事の功績と泉房穂さんの問題(泉氏には明石市長時代のやらかしに関して一般に知られている以上に深刻な事態になっていたという疑惑がある 1)・この二人は素晴らしい政治家と悪い政治家の見本みたいなものだが、それを逆に評価して報道するメディアが有権者を間違えさせている。こうした問題について我々はまず兵庫県で実績を上げそれを全国に伝えたい。兵庫の問題は全国の有権者にはなかなか伝わらない。ゆっくり確実に活動してゆかなければいけない。
これを本当に実行してくれるのならばまことに素晴らしい。同時にそれは的にされた奥谷氏や泉氏にとってはおそらく嫌な展開だ。この、敵の勝利(選挙に勝って議席を得たこと)を逆手に取るやり方は立花氏らしい。奥谷氏・泉氏らには公人としての守るべき立場があるので、例えば選挙期間中の泉陣営のように遊説先を知らせないようにするようなことをすれば批判され説明責任を果たす事が求められるだろう。
立花氏のことはともあれ、全体的な情勢を見れば日本の政治についての私の評価(今の政治に期待しないが近い将来に事態は改善されそうだと見ている)は今回の選挙を経ても変わらなかった。NHK党に投票したなどと書くと一定の人々から顰蹙を買いかねないのが今の状況だが、そのような時代の空気はいずれ変わってゆくだろうと思っている。
最後にこのブログの今後の予定について述べたい。実は都議選について論じたいことがまだ残っているので、そこから投稿を再開するつもりだ。一言断りを入れると、このところ政治にかかわる話を連続して投稿しているが、それは「選挙公報を読む」ということが今の自分にとって意味があったからそうしてきたにすぎない。これからしばらくは政治が混乱して選挙の話もあれこれ出てきそうで悩ましいところであるが、別の話題にも取り組んでゆくつもりだ。
- 香椎なつ 【独占スクープ】泉房穂が隠している「政治家引退宣言」の裏で行われた市議との取引が...参照。この動画は現在百万回以上再生されている。香椎なつ氏本人のコメントによると、地元メディアの神戸新聞とサンテレビが「ファクトチェック」をしたことが話題になった。神戸新聞の記事 「泉氏が選挙後に告訴される?」「引退と引き換えに裏取引?」 暴言受けた明石市議ら否定 (追記あり)。サンテレビ 泉房穂氏と明石市議らが否定「事実ではない」SNS拡散情報をファクトチェック/参院選兵庫選挙区。↩
中村まなみ候補のWebサイトその後
6月22日の開票後表示されなくなっていた中村候補のサイトを再度確認した。 その時と同様にHTMLファイルは存在するが表示はされないままだった(開いた直後何かが一瞬表示されるが真っ白になる)。こうなるともはや技術的トラブルではなく自分たちでそうしていると見るべきだろう。
前回の投稿で「ページのソースを見る限り従前どおりのHTMLファイルは存在しているが」と書いた。しかし本当に「従前どおりのHTMLファイル」だったか確認した訳ではなかった。(ちゃんと表示していた頃のデータが手元にないので比べられない。)見た目そんな感じだったという程度のことだ。これについてお詫びして訂正します。
そのHTMLの中身を見てみたのだが、いろいろ書いてあって、「これは後で隠したくなるかも」と感じる。
<h2 class="fc-red sp-none">中村まなみ<small>青梅総支部政策アドバイザー</small></h2> <div class="message bg-red br-05 pa-1"> <h3 class="fc-red">ごあいさつ</h3> <p> はじめまして、中村まなみです。このたび、青梅総支部の政策アドバイザーとして、青梅市と東京都をつなぐ政策の推進を担うこととなりました。「新しい青梅」を作るため、全力でがんばります!<br> 私はこれまで、広告デザイン事務所を立ち上げ、マーケティングやプロモーションを手がけてまいりました。中学3年生の息子を持つ母親でもあります。これらの経験を通して、生活の基盤である地域経済の成長・所得の向上、国と地域を未来に繋ぐ子育て・教育の充実、お年寄りや障害者も安心できる福祉施策の充実など、多くの場面で「もっとこうなったらいいのに」というアイディアを蓄積してきました。国・東京都・青梅市それぞれにしっかりとした基盤を持つ自民党でなら、それが実現できるとワクワクしています。<br> <br> 青梅市は温かい人の絆、豊かな自然と素敵な伝統に彩られた素晴らしいまちです。新参者ではありますが、人生をかけて青梅市のために働き、全てを捧げる覚悟です。皆さまのご指導、ぜひよろしくお願いします。 </p> </div>
詳しくは知らないのだが、兵庫県の斎藤知事の周辺に不用意な投稿が大炎上して警察沙汰になった広告関係の人がいた。どちらも同じ業種で女性で会社経営者でもあったことから、この人たちは似たタイプの人だったのだろうかと思ってしまった。
(お二人の共通点として「女性」をあげたことについて不快に感じられる方もおられると思います。これについては「社会的なタイプのひとつ」としての共通性を感じたのであえてそのように書いた次第です。)
都議選開票結果を見て
NHKによると、東京都議会選挙の青梅市選挙区の開票結果(2025年6月22日投開票)は以下の通り:
| 候補者 | 得票数(得票率) | |
|---|---|---|
| 当選 | 森村 隆行 | 29,643票 (68.2%) |
| 中村 真奈美 | 8,383票 (19.3%) | |
| 兵頭 秀一 | 5,432票 (12.5%) |
開票率0%の段階で当選確実が出る圧勝だった。
森村候補について
都議選 都民が第1党に 自民 過去最低議席に 国民 参政が初議席を見ると、「22:30すぎ 都民 森村代表「小池都政への評価が私たちへの評価」」という記事が載っている。これを見て「森村氏は本当に党の代表の仕事をしていたんだ」と失礼ながら考えてしまった。彼は3期連続当選の都議会議員で、青梅市長も都民ファーストの会に所属している。この政党は地域に相応に確実な地盤を持っている。けれどもこの人たちおよび彼らの会派が青梅で何をしているのかを知らない私にはそのあたりの実感を欠いていた。
前回のポストの結論部分で森村氏と小池都知事の関係についてコメントした。これも(間違っていたとは言わないが)現実離れをしていたと反省している。
開票速報などを見ていてもう一つ気が付いたことがある。過去の都議選の選挙結果をチェックしていなかったということだ。青梅市選挙管理委員会の選挙結果(執行年度別)というページによると
いずれも森村氏は他候補を引き離した得票数で勝利している。
過去の得票数は選挙を分析する際の基本なのだろうが、「選挙公報を読む」ことに集中していた私は完全に失念していた。ただ、これを見てしまうと、公報を読み解く意欲が下がっていたかもしれない。そういう意味では忘れて良かった。
中村候補について
自民党の中村候補の得票数は過去2回の選挙での自民党候補の得票数の約半分という悲惨なものだった。私は票数が確定した次の日の早朝に各候補者の公式サイトをチェックしてみたのだが、中村候補のサイトは真っ白で読めない状態になっていた。(ページのソースを見る限り従前どおりのHTMLファイルは存在しているが、内容は表示されない状態だった。これが意図的なものなのか技術的なトラブルなのかは不明。12時過ぎの時点でも同じ状態。)他の2人はそんなことはない。もしかするとよほどのことがあったのかもしれないと思ってしまった。
兵頭候補について
前回のポストで「兵頭氏には小池都政への批判や青梅が衰退して行く現状について他候補にはない視点を持っていることが分かる」と書いた。特に「多摩格差」の問題への接近の仕方が印象に残っているので、この点について改めて調べてみるつもりだ。
「東京都議会議員選挙(青梅市選挙区)選挙公報」を読んで思ったこと
昨年の8月に東京都知事選の投票先を決めるために選挙公報を読んだ話を書いた。今回はその続きになる。
もともと私は地元の政治や政治一般についてさほどの興味も知識も持っていない。以前から時々の政治状況に期待感はなく、選挙で何かが劇的に変わると思ったこともあまりない。そのうえ、青梅に根を張っているコミュニティとの接触もほぼないので、そこで共有されているであろう政治経済の話からいわば遮断されている。その結果、今の青梅で何が起こっているのか生の伝聞情報を私は持っていない。
このような隔離された状況であっても、棄権するのは気が進まなかった。私が期待しないのは「今の政治」に対してなので、政治が変われば政治に対する評価もやり直しになる。兵庫県の斎藤知事をめぐる騒動を見ていると、これまで隠れて既得権益を分け合ってきた人々の事が衆目の的になりつつあることが分かる。日本の政治が変わるのもそれほど先の話ではないかもしれないという期待が持てる。
選挙公報を読むことは分量的にさほどの負担ではない。暇空茜(ひまそらあかね)氏を見ていると、限られた情報源から多くのことを引き出そうと思えば案外引き出せるらしいことが分かる。手間暇かけて情報を集めることは悪いことではないが、集めたものを活かすことができなければ意味がない。そのように考えると、限定された事柄に対して集中して分析するやり方は効率が良い。
選挙公報を読んで気が付いたこと
この記事を書くにあたって若干の資料集めをした。主にやったことはAIとチャットして情報源や構成案・下書きを提案してもらったことだ。ただし今回もっとも参考になったのは前回都議選時の選挙公報だった。これはチャットする前に自分で見つけてきた。資料のURLなどは文末にまとめてある。
森村たかゆき候補(都民ファーストの会)
現職であり、今回当選すれば3期目となる森村氏の公約は、前回と比べて格段に情報量が多く、具体的な政策が並んでいた。前回公報では3項目(多摩格差解消・防災対策をすすめます!・森や自然を活かす街作り)+α(「誰一人おきざりにしない社会をつくる」と題してあれやこれや)という感じだった。この時点ですでに項目をたくさん並べる傾向があったが、今回は公約数が8つに増えていて、それらが小さな文字で並んでいる。
引用量が多くなってしまうので、4項目だけ紹介する。ここから全体の雰囲気を察してほしい。
01 物価高騰対策を進めます!
水道基本料金無償化・買い物支援・LPガス料金補助の継続的実施
地域経済への支援
02 日本一の子育て政策を継続+拡充します!
出産支援≪不妊治療費用・無痛分娩費用・産後ケア支援≫
教育支援≪保育料・学校給食費・高校授業料の無償化・フリースクール支援≫
大学や若者支援≪海外留学費用助成や奨学金支援制度の創設≫
03 シニアの安心と社会参画を支えます!
高齢者世帯の見守りや身元保証支援の強化
地域医療への支援と認知症対策、ガン対策の推進
介護職員の処遇改善と人手不足の改善
(中略)
07 多摩格差の解消
都から青梅市への交付金の大幅アップ
鉄道のホームドア整備を進め、遅延の少ない運行体制を支援
都市計画道路の整備促進
(以下略)
書いてあることはそのまま行政の現場に持ち込んでも違和感がなさそうな項目ばかりで、森村氏なり森村氏の政策担当者なりが地方自治体の政策についてよく調べていることが伺える。これは私的には高く評価できる。
一方物足りなく感じた点として「多摩の格差解消」への対策が弱いことがあげられる。公約を読んだが「なぜ格差があるのか」「どう対策するのか」の処方箋があるように思えなかった。「そうしたからと言って格差の解消に効果あるかわからないけれども」という感じ。しかし格差解消の問題については他の候補から公報内での明確な言及がない。そのため相対的な評価としては大きな減点にならない。
余談:森村氏は前回の公報でも多摩格差の問題を取り上げている。題目は違うが中村まなみ候補の公約4の中にも上記と似たような文言が並んでいた。はっきりと憶えていないのだが、たぶん何十年も前から選挙になるとこういうことが言われてきたのではないか。
まんべんなく公約を並べるのはご本人の性格によるものと私は見ている。今回その傾向に拍車がかかり、選挙公報の限られたスペースの中にぎりぎり詰め込んだという感じの形になっている。都民ファーストの会の代表になってから自身初の選挙なので、どうしても負けられないという事情があるのだろう。
中村まなみ候補(自由民主党)
「新しい青梅のための4つの提案」と題された中村氏の公約を全文引用する。
1. 子供たちの笑顔かがやく青梅を
子育て家庭の負担を減らし、将来を担う若者や子供たちの生活を豊かにします。
2. お年寄りが元気な青梅を
年を重ねても明るく元気で暮らせる豊かな高齢社会を実現します。
3. 女性がもっと活躍する豊かな青梅を
女性や高齢者の活躍を後押しし、個人も企業も「もっと稼げる青梅」を作ります。
4. 東京を世界で一番の都市へ!
東京のポテンシャルを更に高め、私たちの青梅市でも都市や道路の整備、JR青梅線の増便、災害対策などを着実に推進します。
公約の1から3を読んでいくと「子供たち」「お年寄り」「女性」が主役の文章が並んでいる。ここに現役世代の男性が出てこない。その割に彼女を応援する女性なりお年寄りなりの有力なグループがあるようには見えなかった。また全体的に抽象的な表現が多い。中村候補の支持基盤がどこにあり誰に向けて語り掛けようとしているのか・具体的に何をしたいと思っているのか、私にはわからなかった。
公約の4でようやく自民党支持層の意向(みたいなもの?)が現れる。残念なことに「都市や道路の整備、JR青梅線の増便、災害対策など」と使い古された言葉が並んでいるにすぎない。それでもこれがそのような人たち向けの公約なのかもしれない。しかし「東京を世界で一番の都市へ!」の下にそれらを掲げるのはつり合いが取れていない感じがする。あくまでも憶測にすぎないが、公約4を書いた人は青梅で自民党の応援をしてきた人々のことがあまりわかっていないのではないか。
青梅はいわゆるリベラルな地域ではないのにこのような候補や政策が出てきたのは何故なのだろうか。たぶんそれなりの事情があってのことと考えるべきだろう。 この点に関して、前回の都知事選の時の選挙公報を合わせて読んでみると、ヒントとなるかもしれないことを見出すことができる。
前回の都議選の自民党公認候補は山崎勝という人だったのだが、この山崎氏は今回の中村候補とは全く異質な立ち位置の人物だった。彼は青梅出身で市議会議員として3期12年の経歴の持ち主である。その後地元選出の衆議院議員・井上信治氏の公設秘書となり、秘書を2年経験した後に都議会議員選挙に出馬している。一方の中村まなみ氏は神奈川県出身・東京モード学園卒(このあたり青梅とは縁もゆかりもなさそうだ)。広告業界のベテランで会社経営者。公報のプロフィールには「自民党『女性未来塾』への参加をきっかけに井上信治代議士と出会い、青梅に出会う」とあった。
また前回公報には自民党公認・公明党推薦(公明党推薦は小さく表示)とあり、「山崎勝さんに期待します」として上述の井上議員のほかに青梅市長と市議会議員16名の名前が掲載されている。この、いかにも自民党の地方政治家らしいキャリアの候補者といかにも自民党らしい選挙戦略で臨んだであろう都議会議員選挙で山崎氏は負け、続く青梅市長選挙でも自民党の現職が都民ファーストの会の挑戦者に敗れた。そして今回の中村候補の公報には政党関係では「自民党公認」としか書いてない。推薦人も井上代議士ひとりだけだ。市長は仕方ないが、市議はどうしたのだろうか?
このあたりの事情は地元の情報が入ってこない私にはわからない話だ。選挙公報を見た限りでは、自民党の組織が今回の選挙に本気を出していない・もしくは出せるような状況にないであろうことがうかがえる。候補者本人を含めて今回も負けだと覚悟していたとしても私的には不思議ではない。
余談になるが、井上信治代議士は私にとっては存在感のない政治家である。私自身は一度もお目にかかったことがないが、青梅市の新旧の住民と交流のあった私の母(故人)は、井上氏について「腰の低い人で関連団体の人達の受けが良い」という評判だと話していたことがあった。その井上代議士について印象に残る思い出がひとつある。彼は自民党が好調の時も不調の時も選挙で勝ち残ってきた人だ。その強さの源泉は第一に陣営が自分達の支持基盤をしっかり保持できていたということにあるだろう。ただ、もう一つ、街中で見かけたポスターの作り方が感心するくらい巧みだったことも印象に残っているのだ。その時々の流行や本人の年齢に応じていかにも受けの良さそうなキャラクターが演出されており、「これだけ作りこめるのだから優秀な広告代理店がバックについているのだろう」と思っていた。「巧みに演出してあっても共感を生むとは限らない」とも。今回の中村まなみ候補が広告業界の人だったのは、こういった方面の背景があるのかもしれない。根拠は弱いけれどもそのように想像した次第だ。
兵頭秀一候補(無所属)
兵頭候補の公報の冒頭4行:
青梅市以外も知っているから青梅市がよくわかる!
居住歴(長い順)=青梅市、葛飾区、足立区、国分寺市、台東区、昭島市、福生市、北区
「権不十年」小池都政にお別れを
ここまでの功績には感謝、しかし権力の長期化は多大なる政治リスク
5行目以下は本人の履歴や著書・地上波テレビ出演歴・YouTube動画のURLらしいQRコードなどが印刷されている。・・・率直に言うとそこで何が表明されているのか私には伝わってこなかった。
兵頭氏の公報に関しては関連情報を読んだりしているうちに分かってくる部分があった。最初の2行は兵頭氏の現住所が葛飾区であることと関係している。葛飾区の住民である彼が青梅市選挙区の選挙になぜ立候補するのかについて述べているのだ。続く2行は、「今回の都議選の判断基準はシンプルに小池都政に賛成か否かだ」という主旨の事をYouTube動画(駅前での演説を収録したもの)で発言していたので、そのあたりの話になる。賛成の人は中村氏なり森本氏に、反対の人は自分に投票してほしいとのことだった。5行目以降の履歴や著書・地上波テレビ出演歴については自分の経営者としての資質と実績を伝えたかったようだ。
上記動画を見ると、兵頭氏には小池都政への批判や青梅が衰退して行く現状について他候補にはない視点を持っていることが分かる。しかしそれが公報の内容に反映されていないのは大きな減点材料だ。私も同類なので言いにくいのだが、他人に対して言いたいことを分かりやすく伝える事ができない人は政治家には向いていないと思う。(あくまでも「政治家には」向いていないという話だ。)
今回の結論
選挙公報の内容を比較すれば最も評価できるのは森村たかゆき候補である。投票すると決めた以上この人に投票するつもりだ。
とはいえ森村氏に投票することが実際にどれほどの意味を持つのか疑いもある。場合によっては自分にとって不本意な結果ともつながりかねないからだ。彼は都民ファーストの会の代表だが、この会はそこの実質的な権力者であろう小池百合子氏次第なのだろうから、森村氏および彼の公約はお飾りのような存在かもしれない。
それならば無効票を投じるとか小池都政に反対する兵頭秀一候補に投票するのはどうか。私としてはどちらも選びたくない。今回自分がやってみたかったことは、だれに投票するか決めることというよりも、選挙公報を読むということだったからだ。つまらなそうに見える選挙公報であっても背景情報を照らし合わせながら読めば何らかの洞察を得ることができる(かもしれない)。このことを今回は大切にしたい。
参考資料
- 東京都選挙管理委員会「青梅市選挙区立候補者一覧」
今回の都議選に立候補している候補者の選挙公報やウェブサイトへのリンクが掲載されている。 - 各候補者の公式サイト:
- 東京都選挙管理委員会「前回(令和3年)都議会議員選挙 選挙公報」
過去の選挙公報をPDF形式で閲覧・ダウンロードできる。
東京都知事選で「ひまそらあかね」候補に投票した話といくつかの選挙公約の感想
都知事選の投票時間の終了が迫る7月7日の夜になって、 投票したい相手がいなかった私は選挙公報をざっと見て印象に残った人に投票することを仕方なく決めた。 正直に言うと読む前から「選挙公約を見るのもうんざり」という気持ちだったのだが、棄権するのは不本意だったのでそうした次第だ。
公報を覘いた結果、「ひまそらあかね」(暇空茜)という人に投票することにした。 YouTubeをよく使う関係でこの人の名前は知っていた。しかしその時点では読んだことも見たこともなかったので、当人が男女どちらかなのかも分からないという程度の認識しかなかった。
ここから選挙公報から「ひまそらあかね」さんの文章をまとめて引用する。
現在は僕を応援してくださる方々から1億6千万円のカンパを預かり
東京都による不正会計疑惑に対し住民監査請求を通し都知事『小池百合子』に対して2桁の住民訴訟をやってます国家賠償請求で勝訴しましたがマスコミは忖度して一切報じません
公金使用の妥当性を都民が精査するには『公文書の開示』が不可欠ですが
小池百合子は僕が不正会計の追及を始めると『のり弁をやめる』と出していた公約を無言で全削除し公文書を〝真っ白な〟のり弁 でしか出さなくなりましたそもそも公金不正問題を追及するのはしがらみのある既存の政治家には難しく忖度なく追及できるのは僕だけでしょう
任期中はあらゆる『公金チューチュー』を探し出して駆逐することをお約束します
ちなみに「ひまそら」さんの公約は以下の通り:
- 公金チューチューをなくす
- 東京都をデジタルで楽しませる
公約することを思い切り絞っているが、私はこれは良い判断だと思った。 しかしこの公約や引用文自体はこの人の知事としての適性を証拠立てるようなものでもない。 それでも最初に引用した部分は印象に残るものだった。
なぜ印象に残ったのかを後から考えてみると、
- ひまそら氏のやっていることが現実に有効であることの発見
- 東京都の問題を取り上げている
この2点があったからのようだ。私はひまそらさんの言っていることがある程度は分かり、共感もしたと言うことだ。 そして7日の時点では他の候補の公約についてそのように感じることはなかった。
「田母神としお」候補の公約を読んで思うこと
ここからはひまそらさん以外の候補の公約を読んで思ったことを参考までにのべておこう。
7つのゼロではなく、5つのマルを!
- 災害に強い都市を作り東京都が強マル。
- 水、食料一週間分の備蓄整備
- 簡易トイレ、毛布などの集積
- 電線の地中化、感度ブレーカーの設置
- 消防団の育成
- 国家の自立を追求しびしっとしマル。
- 都民税を減税して生活があたたマル。
- 都民の生活にゆとりを取り戻す
- AIによる目安箱を設置してすぐに決マル。
- 広く国民の意見を政策に反映
- 見直すべき事項をとりしマル。
ちなみに「7つのゼロ」とは前回の都知事選の際の小池知事の公約のことである: 1.待機児童ゼロ 2.介護離職ゼロ 3.残業ゼロ 4.満員電車ゼロ 5.都道電柱ゼロ 6.多摩格差ゼロ 7.ペット殺処分ゼロ。
田母神さんの公約を読んで感じたことは、この方は憲法とか歴史観などに強い興味のある人物なのであって、 東京都をどうしたいのかという地方自治レベルの問題は本領ではないのだろうということだった。 (本人はまじめに取り組もうとしているように見える。)
まず箇条書きにして論を構成する場合、箇条書きの各項目のレベルと議論の抽象度のレベルを合わせないと ちぐはぐで分かりにくい印象を与える。公約の1と2(防災と国家の自立)と3と4(都民税の減税と AI目安箱の設置)は議論のレベルが違うので全体として何を言いたいのかとらえどころがない。 (公約5は「その他」項目と思えるので、ここでは取り上げない。)
公約3については下位の「生活にゆとりを」という項目を上位に 置くべきだ。生活にゆとりを取り戻すためにどうするかという風に項目を立て、その政策の実現のための 個別の施策として都民税の減税その他(ここは複数の政策を提出すべきところだと思う)を提示する ようにしないと議論の抽象度が1と2と合わない。また、そのようにした方が分かりやすい。公約4についても同じ指摘が成り立つ。
田母神さんという方はひまそらさんと同じ一つの論点に勝負をかけるタイプだ と私は見ている。公約2に全振りをしてもらった方が私的には分かりやすかった。公約2に絞ったとしても都政レベルの話はできるはずだ。
現職・「小池ゆりこ」候補の公約を読んで思うこと
- 首都防衛あらゆる危機からもっと!都民の命と生命を守る(セーフシティ)
- 地震・火災から命を守る木造密集地域の解消促進
- 新たな「調整池」の整備で水害に強いまちづくり
- 災害時、道路を生かし命を守る「無電柱化」の推進
- 900万人が暮らす「マンション防災」の強化
- 多様なひとがもっと!輝く東京へ(ダイバーシティ)
- 保育の第一子無償化など子育て教育施策の無償化と所得制限撤廃を推進
- 海外留学支援や大学給付型奨学金制度など多様な学びとグローバル人材育成を支援
- 特養やグループホームなど介護基盤整備と介護人材の勤務環境をさらに充実
- どんな人も自分らしく生きるインクルーシブな東京へ
- もっと!安心で、活力あふれるまちへ(スマートシティ)
意外なことに、第一公約は良くできていると感じた。おそらくこれは東京都の行政の現状をよりよく反映しており、手堅さという点で田母神氏の公約よりよくできている。 これは現職もしくは与党の強みというやつなのではないだろうか。田母神候補の公約には良かれ悪しかれ手作り感があるのに対し、小池候補の公約1には行政の専門家の助言でもあったのではないかと思わせるものがあった。
それならば小池知事の公約は分かりやすいだろうか。あと2つある公約を見てみよう。
まず最初に、よくわからない用語があったのでGoogleで検索してみた。
- 公約2の「ダイバーシティ」とは 「多様性」という意味の言葉で、政府・自治体や企業などにおける具体的な施策例として 「女性や障がい者の積極的な活用、言語に左右されない業務環境の整備」とか 「ライフスタイルに合わせて働けるテレワークの導入」といったものがあるようだ。
- 公約3の「スマートシティ」とは技術(情報通信技術や人工知能)を活用して都市や地域の抱える課題の解決を 目指す取り組みが先行的に行われている都市や地域のことを呼ぶらしい。
どちらも日常的に使われる用語ではないのだから留意して使ってほしかった。 こういうのも分かりにくさの原因である。
話を戻して全体的な印象を述べると、小池候補の公約は一人の人間の発言としてとらえにくいと私は感じた。 よくわからない意図で取捨選択された項目が集められたものが公約として並んでいる のだがそれらをまとめた意図が分からない。 (選挙公約を読んでそのようなことを感じる人はどれ位いるのだろう?このあたり、世の中の常識が分からない。) 同時に公約には穴があってそのため大事な問題が隠れているような気もする。という風に表現すればよいのだろうか。 前回選挙の公約「7つのゼロ」は多くの人が不便に思っているであろうことを できそうにないことも含めて集めてきたという風に理解できるが、 セーフシティ・ダイバーシティ・スマートシティと並べられても私には意図が分からなかった。
たとえ話をすると、小池さんが知事として対応しなければならない大きな問題が仮にAからJまでの10種類 認識されていたが有権者にそれらのことは知られていなかったとする。 そこに選挙があって小池さんがHとIとJという3つの公約を掲げ、ほかの問題には言及しないという状況が生じたとする。 するとそのような場における私は「公約Hは問題AとCに対応しているように見える。IとJはそれぞれいくつかの問題が取り上げられている ようだがなぜIとJという形にまとめられたのか意図が分からない。 対応すべき問題はほかにもありそうなのだけれどもそれも何なのかわからない」と思っている人に相当する。
これは深読みかもしれないが、政治家の真意というのは表立って言及されない部分を含めて 検証をしないとわからないものなのかもしれない。そのように思っている。
また、余談になるが、「これまでも実績を上げてきたけれどもこの次はもっと!よくなる」 というフォーマットで公約を提示してくる姿勢は印象悪い。このご時勢にそのような言い方をする感覚がわかりかねる。
未来党・「木宮みつき」候補の公約を読んで思うこと
わかりやすい例として取り上げてみた。
- 全ての国民の借金、住宅ローン・カードローン 教育ローンなどを帳消しに
- 消費税以外の税金をなくす(食料品などは非課税に)
- 国民全員に生涯年金を支給(ベーシックインカムとして毎月24万円)
木宮さんという方は興味深い人物のようだし、自分たちの活動の宣伝のために立候補するのも悪いとは思わない。しかしいきなり「全ての国民の」・「消費税以外の税金を」・「国民全員に」という書き出しで、「東京都の問題」をあからさまに捨てている。彼女が属している未来党という政党は徳政令の実施を目指しているそうだが、そもそもそれは「東京から実現」できる性質のものではないのだから、別途東京のことにも触れてもらわないと立候補した意味が分からない。
最後に
この記事を書くために選挙公報を改めて読み返してみたら、「ひまそらあかね」さん以外にも本音で自分の考えを述べている と感じられる候補者がいたことに気が付いた。そのような候補の方が私はより好ましく感じる。今後はそのような人をなるべく見分けるように心がけたい。
結局のところ私は本音や思いがこもっていない公約に意味を感じられなかったのだと思う。 本音で語りつつさまざまな人をまとめることができるような器量のある人物が選挙に出てくる 時代になれば良いと思うのだが、開票直後に小池知事の当選確実が出る状況ではまだまだということなのだろう。
プルタルコスと「口が達者な奴隷」の話
古代ギリシャのヘルメス @kodaigirisyano という方がTwitterへ以下のような投稿をした。
賢者はアンガーマネジメントができるとされていますがその実情は複雑です.口が達者な奴隷がある過失を犯した際に,罰としてプルタルコスは鞭打ちを命じます.すると奴隷は 「あんたは『怒りを抑えることについて』という本を書いてあるじゃないですかぁ」と猛抗議します.プルタルコスの返答は(続く)
https://twitter.com/kodaigirisyano/status/1724245758290121058
プルタルコスは奴隷に「私の表情は変わらず,雑言も吐かず,体を震わせて手を挙げてもいない.そんな私のどこが怒っているように見えるのか?」と尋ねます.さらに「この議論が終わるまで鞭打ちを続ける」ように命じたのです.
アンガーマネジメント成功です😂
https://twitter.com/kodaigirisyano/status/1724246083784847688
この話ですが,出典はゲッリウス『アッティカの夜』第1巻26です.ゲッリウスがプルタルコスの弟子から直接聞いた話なので,かなり信憑性は高いと思われます😂
https://twitter.com/kodaigirisyano/status/1724413273511211141
私にとってこの話は面白いのかどうか微妙だ。「プルタルコスはこういう人だった」ということを伝えるために残された文章だと思われるのだが、 プルタルコスのことも帝政ローマ時代のことも知らない・分からないのでピンとこない。 ただ、読んでいて引っかかる事があったので書き残しておこうと思う。
まず上記の引用から紹介者による「アンガーマネジメント」云々のコメント部分を削除して、元の話を残すようにしてからコメントする。
口が達者な奴隷がある過失を犯した際に,罰としてプルタルコスは鞭打ちを命じます.すると奴隷は「あんたは『怒りを抑えることについて』という本を書いてあるじゃないですかぁ」と猛抗議します.
プルタルコスは奴隷に「私の表情は変わらず,雑言も吐かず,体を震わせて手を挙げてもいない.そんな私のどこが怒っているように見えるのか?」と尋ねます.さらに「この議論が終わるまで鞭打ちを続ける」ように命じたのです.
この話ですが,出典はゲッリウス『アッティカの夜』第1巻26です.ゲッリウスがプルタルコスの弟子から直接聞いた話なので,かなり信憑性は高いと思われます
「口が達者な奴隷」が犯した「ある過失」に対して鞭打ちという刑罰が処されることになった。罰が厳しい事の妥当性についてその奴隷が抗議をする。『怒りを抑えることについて』という本をかいている人が怒りから厳しい罰を科していると。
それに対してプルタルコスは「私の表情は変わらず,雑言も吐かず,体を震わせて手を挙げてもいない.そんな私のどこが怒っているように見えるのか?」と答え、「この議論が終わるまで鞭打ちを続ける」ことを命じた。
たぶんこの話の肝は「私の表情は変わらず,雑言も吐かず,体を震わせて手を挙げてもいない.そんな私のどこが怒っているように見えるのか?」とプルタルコスが言う所だと思う。 プルタルコスには鞭打ちを命ずるに至った経緯の妥当性についてゆるがない自信があるようだ。 また、人が怒っているかどうかを判定するチェックリストみたいなもの?がおそらくあるようで、それに妥当するかどうかで自分自身のことまで含めて判定しているように見える。
こういった一連の経過・過程は現代の日本人である私からすると不自然に感じられる。 ここに私は文化の違いみたいなものを感じ取ったのだが、断片的な話から論を広げてゆくのは危ういので止めておく。
もう一点気づいたことがある。それは「歴史とは勝者の歴史である」という言葉の別の側面だ。 「勝者の歴史」というと権力者が権力に迎合・忖度する学者やジャーナリストに書かせたようなものが典型だと私は思っていたが、違っていたかもしれない。
今回のプルタルコスと奴隷の話を公平に判断しようとするならば、
- 「口の達者な奴隷」が実際のところどのような人物だったのか
- そして「ある過失」とはどんな過失だったのか
を具体的に知っているべきだ。しかし、そのような情報は与えられていない。残されているのはほとんどプルタルコスが言ったことばかりである。
これはプルタルコスがそうするように命じたからではない。また、情報源(プルタルコスの弟子)なりこの話を書き残したゲッリウスという人なりそれを引用した古代ギリシャのヘルメスさんなりがプルタルコスに忖度した訳でもないだろう。 要はプルタルコスが多くの人から興味を持たれている人物であり、言ってしまえば物語の主人公だったから起きたことだ。プルタルコスと比べれば彼の奴隷に興味を持つ人は少ない。 そもそもプルタルコスの話でなければこのような恐らくありふれた出来事が書き留められ現代まで伝わるということはなかっただろう。
出来事を直接見聞きした人は双方についていろいろなことを知っていたかもしれないが、 それを人に話すとき・聞いた話を書き残すときに奴隷の言い分や事情について十分な情報を残しておこうと思う人は少ないはずだ。 同様のことが残された本を読んだ人がその話を別の人にする際にも起きる。 結果的にプルタルコスが何を言ったという話が残され、奴隷については話を成り立たせるのに必要な限りしか残らない訳だ。